2025.01.01の形で記載
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銀座 日本料理香川で味わう口福——米沢牛・山形牛と山形の酒を一緒にいただく、美味しさの理由
── お酒が初めての方も、大好きな方も、ぜひ読んでみてください ──
■ 銀座だからこそ、出会える贅沢がある
「口福」という言葉があります。
美味しいものを口にしたとき、心の底からじんわりと広がる幸せ。幸福の「福」に、口という字を当てた言葉です。
銀座で米沢牛・山形牛のフィレやサーロインをいただき、同じ山形で生まれたお酒を一緒に愉しむ——それだけで、すでに「口福」です。
ただ、ここで少しだけ立ち止まって考えてみてください。
「なんとなく美味しいに違いない」と思いながら食べるのと、「なぜ美味しいのか」を知りながら食べるのとでは、同じ一切れ、同じひと口が、全く別の体験になります。
美味しさには、理由があります。お肉の脂がどう動くか。お酒の何が、料理の何に作用するか。その仕組みを知ってから箸を持つと、口の中で起きることがまるで違って感じられます。
このコラムは、その「なぜ」をお伝えするために書きました。
■ まず、米沢牛と山形牛について
銀座でフィレやサーロインをいただけること自体、実はとても贅沢なことです。
米沢牛は、日本三大和牛のひとつに数えられる銘柄牛です。山形県南部・置賜地方の、奥羽山脈に囲まれた盆地で育てられます。寒暖差の激しい気候、清澄な最上川源流の水、そして30ヶ月以上という長い飼育期間——この三つが重なって、あの霜降りが生まれます。
霜降りの脂には「融点が低い」という特徴があります。牛の脂は通常、体温より高い温度で溶けますが、米沢牛の脂は口の中の体温で、すっと溶けます。だから「とろける」という感覚が生まれるのです。これは決して大げさな表現ではなく、科学的な事実です。
山形牛は、山形県全域の豊かな大地で育てられた高品質な和牛です。米沢牛とは異なる産地の個性を持ちながら、同じA5という最高格付けのもと、きめ細やかな霜降りと上品な旨みが特徴です。
そしてフィレ。一頭の牛から3〜4kgしか取れない、最も希少な部位です。背骨の内側にあり、ほとんど運動しない筋肉のため、脂が少なく、きめが超細かく、やわらかさは和牛の中で最高峰です。サーロインが「霜降りのコクと甘み」の料理なら、フィレは「赤身の純粋な旨みと口溶け」の料理です。
銀座で、この二種の肉を、二種の部位で愉しめること。それだけで既に、日常を超えた食卓です。
■ なぜ、山形のお酒なのか
お肉と同じ「山形」で生まれたお酒を合わせる——この選択には、深い理由があります。
同じ水、同じ風土、同じ四季を生きたものは、食卓の上でも自然と調和します。米沢牛を育てた最上川の水は、山形の酒蔵でも仕込み水として使われています。山形牛が食んだ草が育った大地と、酒米が実った田んぼは、同じ空の下にあります。
「地産地消の取り合わせ」と呼ばれるこの考え方は、フランス料理の世界でも「テロワール」という言葉で大切にされています。同じ土地のものを合わせると、なぜか調和する。それは偶然ではなく、同じ環境が育んだ共通の「味の文法」があるからです。
山形県は日本有数の酒どころです。全国新酒鑑評会での金賞受賞数は常に上位。辛口あり、甘口あり、旨み派あり——その多様な個性が、料理との取り合わせに無限の楽しさをもたらします。またフルーツ王国としても名高く、その豊かな果実がワイン造りにも生きています。
米沢牛を食べながら、同じ山形のお酒を口にする。その瞬間、舌の上で山形という土地が一つにつながります。
■ すき焼きで、こんなに美味しくなる
すき焼きは、日本が誇る最も複雑な鍋料理のひとつです。醤油・みりん・砂糖で作られた割り下の甘辛さ、A5霜降りの脂の甘み、そして溶き卵のまろやかさ——この三つの層が重なって、他では味わえない豊かさが生まれます。
しかし、正直に言うと、この「豊かさ」はそのままでは「重さ」に変わります。
脂のコクは美味しい。割り下の甘辛さも美味しい。でも続けていただくと、だんだん口の中が飽和してきます。「もう一切れ食べたいけれど、少し重い」という感覚、きっとご経験があるのではないでしょうか。
ここにお酒が加わると、何が起きるか。
辛口の日本酒なら——キリっとした酸とキレが、脂の重みをすっと洗い流します。脂のコクだけを口の中に残して、重みだけを連れ去っていく。次の一切れが、まるで最初の一切れのように新鮮に感じられます。
純米大吟醸なら——溶き卵と合わせたとき、特別なことが起きます。卵と酒の甘みが口の中でひとつに溶け合い、やさしさとやさしさが出会う、上品で温かい口溶けになります。
ワインなら——タンニンが脂の分子と化学的に結びつき、霜降りの重みを整えて、旨みだけを口の中に残します。「和牛と赤ワイン」の感動の正体は、この作用にあります。
■ しゃぶしゃぶで、こんなに美味しくなる
しゃぶしゃぶは、すき焼きとは対極の哲学を持つ料理です。
一言で言えば「引き算の美学」です。昆布でとった清澄な出汁の中で、薄切りの霜降り肉をさっとくぐらせる。余計なものを足さない。だからこそ、お肉そのものの旨みと脂の純粋な甘みが、ストレートに伝わってきます。
A5フィレは、出汁に入れて5秒。表面の色が変わった瞬間に引き上げてください。5秒で引き上げたフィレは、箸で持つとふるふると揺れます。口に入れると、噛む前にほどけます。
A5サーロインは、霜降りが半透明に変わり始めた瞬間が食べ頃です。その瞬間、脂は半溶けの状態で、口に入れると赤身と脂の境目がとろりと溶け合います。
透明感のある純米大吟醸なら——しなやかで澄んだ味わいが、料理の邪魔をしません。肉の旨みが消えていく余韻に、雪のようにそっと寄り添います。
旨み豊かな純米吟醸なら——ごまだれとの取り合わせで真価を発揮します。練りごまのコクと米の旨みが重なり、旨みが旨みを呼ぶ連鎖が起きます。
ワインなら——タンニンが脂を整えながら、果実の旨みが肉の旨みと響き合います。
■ 当店の山形のお酒・ワインをご紹介します
ここからは、当店がご用意している5種を一本ずつご紹介します。お酒が初めての方には「どんな味なのか」が伝わるように。通の方には「なぜその味なのか」まで届くように書きました。
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上喜元 特別純米 からくち 720ml 4,950円
熱燗対応・フリードリンク対応
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山形県鶴岡市、庄内平野の端に酒田酒造という蔵があります。
庄内は、山形の中でも日本海に面した独特の風土を持つ土地です。冬は季節風が強く、積雪も多い。その厳しさが、米をたくましく育て、酒を芯のある味に仕上げます。上喜元はその庄内の気候と水が生んだお酒で、酒通の間では長く「食中酒の理想形」として語られてきた一本です。派手に主張しない。しかし、料理とともにあるとき、このお酒は静かに、しかし確実に存在感を示します。
このお酒の辛口は、乱暴ではありません。
口に含むと、まず米のやわらかな旨みが広がります。「おだやかだな」と思う。ところがその直後、日本酒度+12という数字が示す通り、軽快な酸がすっと入り込んで、口の中をきれいに整えていきます。甘みを残さず、しかし旨みは残す。その絶妙な仕事ぶりがこの酒の真骨頂です。飲んだ後の口の中は、重くなるのではなく、むしろすっきりとして、次の一口を自然と求めます。
お酒が初めての方へ——
「辛口って苦いんでしょ?」と思っていたなら、ぜひ一口試してください。苦みではなく「爽やかさ」です。飲んだ後、口の中がすうっとする感覚。それがこのお酒です。日本酒の最初の一杯として、入りやすい一本だと思います。冷やして飲んでも、常温でも、熱燗でも——どの温度でも美味しいので、「今日の気分」で温度を選んでいただけます。
お酒が好きな方へ——
日本酒度+12、精米歩合55%の「美山錦」「雪化粧」ブレンド。旨みの骨格はしっかりしながら、酸のキレで全体を引き締める設計は、まさに食中酒の完成形です。冷やでは爽快感と酸のシャープさが際立ち、常温では米の旨みがふくらんでボディに厚みが出る。熱燗では甘みと旨みがさらに増して、全く別のお酒のような豊かさになります。三つの温度帯でまったく異なる表情を見せる——これが上喜元 からくちの奥深さであり、「酒通好み」と呼ばれる理由です。また、フリードリンクにも対応していますので、食事の流れの中で気軽に何杯でもお愉しみいただけます。
料理との取り合わせでは、米沢牛サーロインのすき焼きと合わせたときに、その真価がよく分かります。割り下の甘辛さと霜降りの脂が口を覆ったとき、このお酒をひと口含むと、脂のコクだけを残して重みが消えていきます。まるで脂の海に一筋の清流が流れ込むような感覚。何切れ食べても最初の一切れのように美味しく感じられるのは、このお酒がそばにあるからです。冬の夜、熱燗でしゃぶしゃぶの温かい出汁と合わせるのも、格別の愉しみ方です。
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出羽桜 純米大吟醸 雪女神 四割八分 720ml 6,600円
冷やして(5〜15℃)
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「雪女神」という名を持つお米があります。
山形県が20年以上の歳月をかけて開発した、山形生まれの酒造好適米です。寒冷な気候の中でゆっくりと育つこのお米は、大粒で心白(しんぱく)が大きく、磨くほどに純粋な旨みを引き出せる特別な品種。山形のお酒好きの間では「山形酒米の集大成」とも呼ばれます。長い研究と試作の末にようやく完成したこの品種には、山形の農家と酒蔵の20年越しの夢が宿っています。
その雪女神を醸す「出羽桜酒造」は、山形県天童市に蔵を構える、全国的にも名の知られた蔵元です。「吟醸酒を広めた蔵」として歴史に刻まれるほど、品質への姿勢が徹底しています。その蔵が「雪女神をより気軽に愉しんでいただきたい」という願いのもとに仕込んだのが、この四割八分です。
精米歩合48%まで磨き上げる、とはどういうことか。玄米の状態から半分以上を丁寧に削り落とし、残った芯の純粋な部分だけを使って醸す。それだけの手間と時間をかけて生まれるのが、この透明感です。削り落とされた部分には雑味のもとになる成分が多く含まれており、磨けば磨くほど、お酒は清らかになっていきます。
お酒が初めての方へ——
口に含んだ瞬間の感覚は、重さではなくしなやかさです。冷えたグラスから立ち上る香りは、華やかな果実というより、雪解け水が流れる山の空気のような清澄さ。飲み込んだ後、舌の上に残るのは旨みだけで、余計なものが何もない。「これが純米大吟醸の味か」とはっきり感じていただける、そんな一杯です。日本酒に馴染みのない方でも「きれいだな」「上品だな」とすんなり感じていただけると思います。
お酒が好きな方へ——
精米歩合48%でありながら、過度に軽くならず、しっかりとした旨みの芯を持っているのがこの酒の美点です。「やや濃厚・やや甘口」という酒質は、食事の邪魔をしない絶妙な位置に立っています。温度帯は5〜10℃でクリアな透明感と繊細な香りが最大に引き出され、10〜15℃にするとふわりと甘みと旨みが増して、また別の表情を見せます。わずか数度の違いで酒の顔が変わる——その繊細さを意識しながら愉しんでいただくと、この酒の深さがよく伝わります。また、使用米が「雪女神」であることを知りながら飲むと、山形という産地そのものを舌で感じる体験になります。
山形牛フィレのしゃぶしゃぶと合わせたとき、このお酒の本質が伝わります。出汁で5秒くぐらせたフィレの、純粋で繊細な旨み。そこへ雪女神を含むと、同じ「山形の透明感」が口の中で静かに共鳴します。どちらも主張が強くなく、どちらも素直で清澄。それが重なることで、静かなのに豊かという、なんとも不思議な充足感が生まれます。「今日のお肉も、このお酒も、同じ山形で生まれたんですよ」——その一言が、食事をもう一段、深い体験に変えてくれます。
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上喜元 純米吟醸 720 720ml 7,150円
旨み派・食通の方に
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精米歩合40%。この数字を見てピンとくる方は、もうこのお酒の価値が分かるはずです。
通常、精米歩合50%以下であれば「純米大吟醸」を名乗れます。このお酒は40%まで磨いているにもかかわらず、「純米吟醸」として世に出ています。なぜか。造り手が「香りより旨みで勝負する」という哲学を選んだからです。
高精白によって得られる繊細さをすべて「旨みの純度」に注ぎ込んだ、いわば旨み一本勝負のお酒。上喜元の蔵が誇る自社培養酵母で丁寧に醸されたこの純米吟醸は、香りが華やかに前に出ることなく、口の中でじっくりと、米の旨みが波のように広がっていきます。
お酒が初めての方へ——
「日本酒の香りが得意じゃなくて」という方に、むしろおすすめしたいお酒です。香りで押してこないので、構えずに飲めます。飲んだ瞬間はおとなしく見えますが、舌の上でゆっくりと旨みが展開していく感覚は、料理を食べながらだと特によく分かります。最初の一口では「穏やかだな」と思う。でも食事が進むにつれて「このお酒、なんか気になる」という感覚が積み重なっていく。「気づいたらまた飲みたくなっていた」というのが、このお酒への正直な感想です。お酒に詳しくなくても、旨みとは何かを体感できる一本だと思います。
お酒が好きな方へ——
「美山錦」精米歩合40%、自社培養酵母。この仕様で生まれる酒質は、旨みの輪郭がはっきりしているのに重さがない。「伸びやか」という表現がぴったりで、食事の最初から最後まで飽きることなく飲み続けられる懐の深さがあります。華やかな吟醸香を求める方には物足りないかもしれませんが、料理と一緒に飲んだとき、このお酒がいかに食卓に溶け込み、料理を引き立てるかに気づいていただけるはずです。「主張しないことが最大の主張」——そういう哲学を持つ酒が好きな方には、特に刺さる一本です。なお720mlは精米40%、1800mlは精米50%と仕様が異なりますので、40%の真骨頂を味わうには720mlをお選びください。
ごまだれのしゃぶしゃぶで、このお酒は真価を発揮します。練りごまのコクとサーロインの脂の甘みが混ざり合ったところへ、この酒の豊かな旨みが深く重なります。旨みが旨みを呼ぶ連鎖が起きて、口の中で旨みの層が幾重にも積み重なっていく。食べながら飲んでいるのか、飲みながら食べているのか、境界が曖昧になるほどの一体感。時間が止まるような、深い余韻の中に静かに座っていたくなる——そんな美味しさです。
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初孫 純米大吟醸 夢工房 720ml 7,700円
日本酒が初めての方・女性の方に特におすすめ
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山形県酒田市に、東北銘醸という蔵があります。
酒田は、江戸時代に日本海交易の要衝として栄えた港町です。北前船が行き交い、全国の文化と物産が集まったこの土地には、豊かな食文化と、それを支える酒造りの伝統が根づいています。「初孫」という名前の由来は「初孫の誕生のように喜ばしい酒を」という願いから。その名の通り、このお酒には愛らしさと温かさがあります。
酒米の王様と呼ばれる「山田錦」を50%まで磨き、丁寧に醸したこの純米大吟醸を一言で表すなら「やさしさ」です。
硬さがない。角がない。アルコールの刺激が主張しない。口に含んだ瞬間から飲み込むその瞬間まで、ずっとやわらかい。清涼感があり、さわやかな果実を思わせる香りがほんのりと漂い、ふっくらとした甘みがやさしく広がって、するっと消えていく。飲み終えた後、口の中に残るのは幸せな感触だけです。
お酒が初めての方へ——
「日本酒は苦手で」という方に、まずこの一杯を飲んでいただきたい。「日本酒ってこんなに飲みやすいんだ」と感じていただける自信があります。アルコールの主張がなく、甘みがやさしく、後味がすっきりしている。日本酒との出会いの一杯として、これ以上ふさわしいものはないかもしれません。「日本酒は敷居が高い」というイメージが、このお酒の一杯でやわらかく崩れていく——そんな体験をされるお客様を、私たちは何度も見てきました。日本酒の世界への、最高の入口です。
お酒が好きな方へ——
山田錦50%という純米大吟醸の王道スペックで、あえて「軽やかさ」に振り切った設計。アルコール感を感じさせない飲みやすさの中に、確かな米の旨みが宿っています。「すいすい飲める」ことの心地よい危うさを愉しむお酒でもあります。一見シンプルに見えて、飲み込んだ後に静かに長く続く余韻の質の高さに、通の方ほど気づかれます。女性のお客様はもちろん、普段は辛口しか飲まないという方にも、「たまにはこういうお酒も」と勧めたくなる一本です。
米沢牛フィレのすき焼きで、溶き卵と合わせたときが白眉です。フィレを溶き卵にくぐらせると、黄金色のまろやかな衣が肉を包みます。そこへ夢工房を合わせると、卵のやわらかな甘みとお酒のふっくらした甘みが口の中でひとつに溶け合います。やわらかさとやわらかさが出会う——まるで上質な絹に包まれるような口当たりです。大切な方との記念日、ご家族でのお顔合わせ、特別な夜の食卓に、ぜひ一緒にいただいてください。
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高畠ワイナリー バリック メルロー&カベルネソーヴィニヨン 2019
ボトル 11,000円 / グラス 1,650円
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山形県置賜地方に、高畠町という小さな町があります。
米沢牛が育つ置賜の大地と、同じ地域です。盆地特有の大きな寒暖差——昼は暑く、夜は冷える——この気候がぶどうに糖分と酸のバランスをもたらします。「フルーツ王国山形」と呼ばれるこの県の豊かな農業の底力が、ワイン造りにも生きています。
高畠ワイナリーは、その地でフランス品種のぶどうを育て、世界基準のワイン造りに挑み続けている蔵です。国内の品評会にとどまらず、海外のワインコンクールでも評価を受けるその実力は、「日本ワイン」という枠を超えて語られるほどです。
このバリック メルロー&カベルネソーヴィニヨンは、メルローとカベルネソーヴィニヨンという二つのフランス品種を、小樽(バリック)で熟成させたブレンドワインです。「バリック」とは225リットルの小さな樽のこと。大きな容器で熟成させるより、小樽では樽の木の香りと味わいがワインに深く移り、複雑な風味が生まれます。
「和食にワイン?」と思う方もいるかもしれません。でも考えてみてください。米沢牛が育った置賜の大地と、このワインのぶどうが育った大地は、同じ場所です。同じ風土が育んだもの同士——合わないはずがありません。
そしてもう一つ、科学的な理由もあります。赤ワインに含まれる「タンニン」という成分は、脂の分子と化学的に結びつく性質を持っています。霜降りの脂が口を覆ったとき、タンニンがその脂と結合することで、脂の重みだけが消えて旨みだけが口の中に残ります。これが「和牛と赤ワインの感動」の正体です。日本酒がお酒のキレで脂を「流す」なら、ワインのタンニンは脂を「整える」。異なるアプローチで、同じ「美味しさの解放」が起きます。
ワインが初めての方へ——
赤ワインというと「渋い・重い・難しい」というイメージがあるかもしれません。でもこのワインのメルロー由来のタンニンはやわらかく、赤い果実の甘みがそれを優しく包んでいます。グラスに注ぐと漂うチェリーやプラムを思わせる果実の香り、樽熟成によるバニラのような温かみ、そしてなめらかな口当たり。飲み込んだ後に続く、ほのかに甘く温かい余韻。「赤ワインって、こういう味なんだ」と素直に感じていただける、親しみやすい一本です。難しく考えず、まずグラス一杯、お肉と一緒にお試しください。
ワインが好きな方へ——
メルローの果実の柔らかさとカベルネ・ソーヴィニヨンの骨格が、バランスよく重なった食事に寄り添う設計のワインです。2019年ヴィンテージは、樽の影響が程よく溶け込み、果実味がまだ生き生きとしています。和牛の霜降りと合わせたとき、タンニンが脂を整えながら、ワインの果実の旨みが肉の旨みと響き合う——「和牛と山形ワインの邂逅」とも言えるこの体験は、日本酒では決して生まれない種類の感動です。すき焼きの割り下の醤油のコクとカベルネの骨格が重なったとき、和と洋がひとつになる瞬間があります。またごまだれのしゃぶしゃぶとの取り合わせは、ごまのコクとカベルネの力強さが共鳴して、豪快でありながら後味がきれいという、力と品を兼ね備えた美味しさになります。日本ワインへの関心が高まっている今、山形という産地のポテンシャルをぜひこの一本で感じてみてください。
山形のぶどうで造ったワインと、山形の牛肉。同じ大地の、最高の取り合わせです。
■ 迷ったときの、かんたんな目安
スタッフに「こういうお酒が好き」「これが飲みたい」とお気軽にお声がけください。お料理とお好みに合わせて丁寧にご提案いたします。
米沢牛すき焼き(サーロイン)
→ 上喜元 からくち。脂のコクを辛口が引き締め、何切れいただいても最初の一切れのように美味しくいただけます。
米沢牛すき焼き(フィレ・溶き卵)
→ 初孫 夢工房。卵の甘みとお酒のやさしい甘みが溶け合い、口の中が絹のようになります。
しゃぶしゃぶ(ポン酢)
→ 出羽桜 雪女神。透明感ある味わいがお肉の繊細な旨みに、雪のように静かに寄り添います。
しゃぶしゃぶ(ごまだれ)
→ 上喜元 純米吟醸 または 高畠バリックワイン。旨みとコクが幾重にも重なり、時間が止まるような余韻が生まれます。
日本酒が初めての方
→ 初孫 夢工房 から始めてみてください。きっと「日本酒ってこんなに飲みやすいんだ」と感じていただけます。
ワインをお好みの方
→ 高畠バリック メルロー&カベルネ をぜひ。和牛との取り合わせの豊かさに、きっと驚いていただけます。
熱燗で、じっくりと愉しみたい方
→ 上喜元 からくちを熱燗で。米の旨みがふくらんで、しゃぶしゃぶの温かい出汁と深く溶け合います。
■ おわりに
お酒の知識は、なくても大丈夫です。「美味しい」と感じる舌があれば、それで十分です。
「なんとなく美味しい」から「なるほど、だから美味しい」へ。その一歩が、同じ食卓を全く別の体験に変えます。
銀座で、米沢牛・山形牛のフィレやサーロインをいただきながら、同じ山形で生まれたお酒を一緒に口にする。その瞬間に広がる味わいの理由を、少しでもお伝えできたなら嬉しいです。
スタッフ一同、皆さまの口福のために、心を込めてご用意しております。
どうぞ、ごゆっくりお愉しみください。
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