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2026.02.21
ひな祭りの由来と七段飾りの意味|ひな祭りのお食事会




🌸 ひな祭りコラム
―受け継がれる願いと、食卓を囲む温もり―


■ ひな祭りの歴史 ―流し雛から豪華絢爛な段飾りへ―

三月三日、桃の節句。春のやわらかな光の中で、色とりどりのお雛様が並ぶ光景は、日本の春の訪れを告げる、もっとも美しい風物詩のひとつです。

ひな祭りの起源は、今からおよそ千年以上前、平安時代にまでさかのぼります。当時の宮中では、三月の最初の巳の日(上巳)に、自分の穢れや災いを紙や草で作った人形(ひとがた)に移し、川や海に流して厄を祓う「上巳の節句」という行事が行われていました。これが「流し雛」の原型です。人形に息を吹きかけ、体をなでて穢れを移し、水に流すことで、病気や災いから身を守ろうとしたのです。

一方、平安貴族の子どもたちの間では、「ひいな遊び」と呼ばれる人形遊びが盛んに行われていました。小さな御殿や調度品を作り、人形を並べて楽しむこの遊びは、現代のままごと遊びに近いものでした。やがてこの「ひいな遊び」と「流し雛」の風習が結びつき、人形に子どもの身代わりとなって厄を引き受けてもらう、という考え方が生まれていきます。

室町時代になると、人形は川に流すものから、飾って愛でるものへと変わっていきました。そして江戸時代に入ると、幕府が五節句のひとつとして三月三日を公式に定め、「桃の節句」として武家や町人にも広く普及していきます。この頃から、雛人形はどんどん精巧で豪華になり、大名家では嫁入り道具のひとつとして立派な雛飾りを持参する風習も生まれました。段飾りの形式が整い、現在のような七段飾りの原型が確立されたのもこの時代のことです。

もともと「厄を祓う」ための行事だったひな祭りが、時代を経て「女の子の健やかな成長と幸せを願う」節句へと姿を変えていった。その歴史の流れの中に、子を想う親の普遍的な愛情を感じることができます。


■ 七段飾りの世界 ―宮中の雅を再現した、祈りの舞台―

七段飾りは、単なるお人形の飾りではありません。それは平安から江戸にかけての宮中文化を凝縮した、精巧なミニチュアの世界であり、ひとつひとつの人形とお道具に、深い意味と祈りが込められた「祈りの舞台」です。

七段の構成は、宮中で行われた婚礼の儀式をそのまま再現したもの。最上段の内裏雛から、官女・楽人・護衛・従者と続き、下段には嫁入り道具が整然と並びます。この世界全体が「我が子の将来の幸せ」を祈る、親から子への壮大なメッセージなのです。


◆ 一段目 内裏雛(だいりびな)


【どんな人たち?】
最上段に鎮座するのは、男雛(おびな)と女雛(めびな)の一対。天皇と皇后を表す、七段飾り全体の主役です。向かって左に男雛、右に女雛を置くのが関東式の並び方で、京都では逆になる「京雛」の様式も伝わっています。

【何を持っている?】
男雛は右手に「笏(しゃく)」を持ちます。笏とは、朝廷の儀式で用いる細長い板のことで、正装の証です。女雛は「桧扇(ひおうぎ)」を手に持ちます。平安時代の宮中女性が用いた、桧の薄板を重ねた扇で、高貴な女性の象徴です。二人の間には「雪洞(ぼんぼり)」と「桃の花」、そして「菱餅(ひしもち)」が添えられ、華やかな宮中の婚礼の場面を演出しています。

【込められた願い】
「良縁に恵まれ、穏やかで幸せな結婚生活を送れますように」という、親から娘への切なる願いが込められています。天皇・皇后の姿を借りることで、娘の人生がもっとも尊く、守られたものであってほしいという祈りが表現されています。


◆ 二段目 三人官女(さんにんかんじょ)

【どんな人たち?】
宮中でお后(きさき)に仕える、三人の女官です。お后の身の回りの世話をしたり、儀式の準備を整えたりする役目を担います。三人のうち中央の官女だけが「お歯黒」をして眉のない「既婚者」の姿で描かれることが多く、残る二人は未婚の女官を表しています。この細かなリアリティが、宮中の日常を忠実に再現しています。

【何を持っている?】
向かって右の官女は「長柄銚子(ながえのちょうし)」を持ちます。長い柄のついたお銚子で、お酒を注ぐための道具です。中央の官女は「三方(さんぼう)」を持ちます。神様へのお供えや儀式の品を載せる台で、神聖な場の設えを担います。向かって左の官女は「加えの銚子(くわえのちょうし)」を持ちます。長柄銚子を補助するための控えの銚子で、お祝いの席を万全に整える役割を果たします。

【込められた願い】
「素晴らしい友人や仲間に恵まれ、人生の大切な節目をともに祝ってくれる人に囲まれますように」という願いを表しています。三人が力を合わせてお祝いの場を作る姿は、「協調性」と「思いやり」の大切さも伝えています。


◆ 三段目 五人囃子(ごにんばやし)


【どんな人たち?】
宮中のお祝いの場で雅楽を奏でる、五人の若い楽人です。能楽の囃子方をモデルにしているともいわれ、いずれも烏帽子(えぼし)をかぶり、直衣(のうし)姿で演奏に臨んでいます。にぎやかな音楽でお祝いの席を盛り立てる、華やかな役割を担います。

【何を持っている?】
向かって右から順に、それぞれの楽器を持ちます。

① 謡(うたい):扇を持ち、口を開けて謡を歌う姿。雅楽の中で唯一、声で表現する役割。
② 笛(ふえ):横笛を口元に構えた姿。澄んだ音色を奏でます。
③ 小鼓(こつづみ):肩の上に鼓を載せ、手のひらで打ち鳴らす姿。
④ 大鼓(おおつづみ):膝の上に置いて打つ、小鼓より一回り大きな鼓。
⑤ 太鼓(たいこ):前に立てた太鼓を、撥(ばち)で打つ姿。

【込められた願い】
「豊かな感性と才能に恵まれ、人生を明るく、楽しく歩んでほしい」「芸事や音楽に親しみ、心豊かな人生を」という願いが込められています。五人が息を合わせて演奏する姿は、「チームワーク」と「調和」の大切さも伝えています。


◆ 四段目 随身(ずいじん)




【どんな人たち?】
宮中を外敵の侵入から守る護衛の武官です。「随身(ずいじん)」とは、高位の貴族や皇族に随行して警護する役職のこと。向かって右に若い「左大臣」、左に年配の「右大臣」が座ります。若い者が左、年長の者が右に置かれるのは、左が上位とされる宮中のしきたりによるものです。この細部にも宮中のルールが忠実に反映されています。

【何を持っている?】
弓と矢を携え、腰には刀を帯びた武装した姿で表されます。若い左大臣はきりりとした凛々しい顔立ちで、年配の右大臣は白い髭をたくわえた風格ある顔立ちが多く、この対比も宮中の実際の様子を再現しています。足元には「沓(くつ)」を履き、頭には「風折烏帽子(かざおれえぼし)」をかぶった正装の姿です。

【込められた願い】
「悪いものから守られ、健やかに、たくましく育ってほしい」という厄除けと健康への願いが込められています。強い護衛が女の子の人生をしっかりと守ってくれるように、という親の願いが、この二体に託されているのです。


◆ 五段目 仕丁(しちょう)

【どんな人たち?】
宮中の雑務全般を担う、三人の従者です。掃除・荷物運び・お供など、日常のさまざまな仕事をこなす下働きの人々です。七段飾りの中で唯一「喜怒哀楽」の表情が描かれた人形であり、三体それぞれが異なる顔をしているのが大きな特徴です。「泣き上戸・笑い上戸・怒り上戸」と呼ばれるこの表情の違いは、人生の豊かさと複雑さをそのまま表現しています。

【何を持っている?】
「熊手(くまで)」または「箒(ほうき)」を持ちます。清掃を担当し、常に場を清潔に保つ役割です。

【込められた願い】
「どんな感情も、どんな出来事も、乗り越えていける強さと豊かな心を持ってほしい」というメッセージが込められています。人生には喜びも悲しみも怒りもあるけれど、それすべてを受け入れながら生きていける力を、という深い願いです。


◆ 六段目・七段目 嫁入り道具のお道具


【どんな道具が並ぶ?】
六・七段目には、宮中の生活で使われるさまざまな調度品が整然と並びます。これらはいずれも、当時の上流階級の「嫁入り道具」を精巧に再現したもの。娘が嫁ぐ際に持参する生活道具一式が、ミニチュアで表現されています。


【一つひとつの意味】

箪笥(たんす)
着物や衣類を収める家具。「衣服に困らない豊かな生活を」という願い。

鏡台(きょうだい)
鏡と化粧道具を納める台。「いつまでも美しく、凛とした女性でいられますように」という願い。

針箱(はりばこ)
裁縫道具一式を収める箱。「手芸や家事を器用にこなせますように」という願い。

重箱(じゅうばこ)
食べ物を重ねて入れる漆塗りの箱。「食に困らず、豊かな食卓に恵まれますように」という願い。

火鉢(ひばち)
炭を入れて暖をとる道具。「寒さに凍えることなく、温かな暮らしを」という願い。

御所車(ごしょぐるま)
牛車とも呼ばれる、宮中の女性が乗る乗り物。「どこへ行っても守られ、優雅に移動できますように」という願い。

御駕籠(おかご)
人が担いで運ぶ乗り物。「外出先でも守られますように」という厄除けの意味も持ちます。

茶道具(ちゃどうぐ)
茶を点てるための道具一式。「教養を身につけ、品のある女性に育ってほしい」という願い。

【込められた願い】
「将来、生活に困ることなく、豊かで満ち足りた毎日を送ってほしい」という親の願いが、ひとつひとつの小さな道具に丁寧に込められています。嫁ぐ日のために何もかも揃えてあげたい、という親の愛情が、これほどまでに細やかな形で表現されているのです。


■ ひなあられとひしもち ―三色に宿る、自然と生命の祈り―


ひな祭りの食卓に欠かせないのが、ひなあられとひしもちです。どちらも愛らしい見た目の和菓子ですが、その色と形には深い意味が込められています。

ひしもちは室町時代から伝わる伝統菓子で、菱形は「子孫繁栄」と「長寿」を象徴する水草の菱(ひし)に由来します。桃色・白・緑の三色の重なりは、「雪の下から新芽が芽吹き、桃の花が咲く春の情景」を表しているとされ、まさに季節の移ろいを一枚の菓子に封じ込めたような美しさがあります。桃色は魔除けと生命力、白は清浄と純粋さ、緑は健康と長寿を意味します。

ひなあられは、お雛様を屋外に持ち出して自然の風景を見せる「ひなの国見せ」の際に持ち歩いた携帯食が起源とされています。白・桃色・緑(地域によっては黄色も加わり四色)の春の色が詰まっています。どちらも「美しく、健やかに、幸せに」という願いを、形と色で表現した、日本ならではの美意識の結晶といえるでしょう。


■ 現代のひな祭り ―変わる形、変わらぬ心―


近年、住宅事情の変化とともに、ひな飾りの形も大きく様変わりしてきました。七段飾りを飾れる広い和室を持つ家庭は少なくなり、コンパクトな親王飾り(内裏雛だけの二体飾り)や、木目込み人形を使った小ぶりな飾り、ガラスケースに収まるモダンなデザインのものなど、現代のライフスタイルに合わせた多様なスタイルが生まれています。また近年は、陶器やガラス素材の雛人形、手のひらサイズのちりめん細工のお雛様など、インテリアとして楽しめるおしゃれな雛飾りも人気を集めています。壁掛けタイプなどは本当に場所を取りません。
この七段飾りのひな人形は飾るのも収納するのも手間がかかります。忙しい現代では大変貴重です。

形はどれほど変わっても、変わらないものがあります。それは、「我が子に幸せになってほしい」という、親の真っすぐな愛情です。七段飾りを丁寧に組み立てる手も、小さな親王飾りをそっと棚に置く手も、その温もりはまったく同じです。ひな祭りはいつの時代も、子どもへの愛の表現であり続けています。


■ 大切な人と食卓を囲む、ひな祭りの意義

ひな祭りとは、子どもの成長を祝うだけでなく、家族や大切な人たちが一堂に集まり、「ありがとう」と「これからもよろしく」を伝え合う日でもあります。普段はなかなか揃わない家族が顔を合わせ、温かい料理を囲み、笑顔で語らう。その何気ない時間の積み重ねこそが、子どもにとって一生の宝物になる記憶です。

お雛様を前にして、祖父母から孫へと伝えられる昔話や家族の思い出。食卓に漂うお料理の香り。そういった体験が、子どもの心に「自分は大切にされている」という安心感と、日本の文化への誇りを育んでいくのではないでしょうか。


■ 当店からのご提案 ―ひな祭りを、日本料理の温もりとともに―

当店では、ひな祭りの季節に合わせてお雛様をお飾りし、皆様のご来店を心よりお待ちしております。大切なお子様の節句のお祝いに、ご家族やご友人とぜひ当店へお集まりください。

会席料理は、旬の食材をひとつひとつ丁寧に仕上げた、晴れの日にふさわしい日本料理の真髄です。季節の移ろいを皿の上で感じながら、ゆっくりとお祝いのひとときをお楽しみいただけます。

すき焼きは、甘くやさしい割り下と、とろけるような和牛の旨味が調和した、日本が誇る鍋料理です。鉄鍋を囲んで皆が箸を伸ばす光景は、それ自体がひとつの幸せな絵になります。お子様から年配の方まで、みんなで分け合う喜びが食卓をいっそう温かくしてくれます。

しゃぶしゃぶは、素材の持つ本来の旨味と香りをそのまま活かした、上品で滋味深い料理です。薄くひいた和牛をさっとくぐらせ、ポン酢やごまだれで味わうシンプルな美しさの中に、日本料理の奥深さが凝縮されています。華やかなお祝いの席にふさわしい、洗練された一鍋です。

すき焼きもしゃぶしゃぶも、みんなで同じ鍋を囲むからこそ美味しい料理です。ひとつの鍋を囲んで言葉を交わし、笑い、食べる。その温かな時間が、お子様にとってひな祭りの大切な思い出となり、「また来年も集まろう」という気持ちをつないでいきます。

子どもの幸せを願う日に、大切な人とともに温かい食卓を。当店のひな祭りのお席で、素敵な春の一日をお過ごしください。

🌸 皆様のご来店を、心よりお待ちしております。


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