私の修業時代「アメリカ編(ミシュラン三ツ星レストランで1年間働いた頃)」2025.09.16

心を込めて綴る修業時代の思い出
~努力が実を結んだアメリカでの1年間~
思い出を振り返って
この度は、私たちサービススタッフの修行時代の思い出を、心を込めてご紹介させていただきます。当時の苦労や挫折、そして小さな努力の積み重ねがあったからこそ、今日の私たちの笑顔と成長があると深く感じております。お客様により良いサービスをお届けできるよう、これからも日々精進してまいります。
アメリカへの旅立ち
今から約35年前の1989年、私は大きな夢を胸に、アメリカの2年制大学でホテルレストラン経営学を学ぶため海を渡りました。異国の地での学びは想像以上に厳しく、言葉の壁は高く立ちはだかりました。しかし、将来への強い想いが私を支え、必死に勉強に励みました。
卒業に必要だった有給インターンシップは、最長1年間という貴重な機会でした。私が選んだのは「The Inn at Little Washington」という、ワシントンDCから西へ100キロほど離れた場所にある、ミシュラン三ツ星のオーベルジュでした。その選択が、私の人生を大きく変えることになるとは、当時の私には想像もできませんでした。
戦場のような毎日の始まり
レストランでの初日、私は圧倒されました。約60席の店内で繰り広げられるディナーサービスは、まさに芸術的でありながら戦場のような緊張感に満ちていました。
私はアシスタントとして勤務を開始しましたが、その厳しさは想像を遥かに超えていました。ヘッドウェイターになるためには、全てのメニュー内容を素材から作り方、盛り付けに至るまで、口頭で美味しそうに、そして正確にお客様にお伝えできなければなりません。さらに、オーナーシェフであるパトリック氏からの厳格な承認が必要でした。
孤独と挫折の3ヶ月間
3ヶ月間、私は会話の輪に入ることができませんでした。チップをいただくこともありませんでした。それは単に言葉の問題だけではありませんでした。各スタッフの驚くべき業務スピードについていくことで精一杯で、仕事中に交わされる超早口の英語を理解することも、聞き返す余裕もない日々が続きました。
夜遅く一人で宿舎に戻る道のりは、孤独感と挫折感で重く沈んだ気持ちでいっぱいでした。しかし、諦めたくない気持ちだけは消えませんでした。
運命を変えた一つの決断
ある夜、翌日の昼にウェディングパーティーが予定されているという話を聞き取り、私は何も言わずにその準備時間に合わせて「勝手に」出勤しました。予想に反して、スタッフたちは心から歓迎してくれました。その瞬間、見えない壁が取り払われ、「俺たちの仲間だ」という温かい雰囲気に包まれました。
努力が実を結んだ瞬間
その日の夜から、私の状況は劇的に変わりました。チップの分け前をいただけるようになり、会話にも積極的に参加できるようになりました。スタッフの皆さんは、私が理解できるようにゆっくりと話してくれ、分からないことがあれば丁寧に教えてくれました。
心に刻まれた学びと成長
この1年間で学んだことは、技術的なスキルだけではありませんでした。毎日の小さな努力の積み重ね、失敗から学ぶ謙虚な姿勢、チームワークの大切さ、そして何よりも「心を込めてお客様をおもてなしする」ことの意味を、身をもって体験することができました。
今も続く絆と感謝
オーナーシェフのパトリック氏は現在も健在で、「The Inn at Little Washington」で素晴らしい活躍を続けていらっしゃいます。いつか必ず機会を見つけて、感謝の気持ちを直接お伝えしに伺いたいと心から願っています。
これからへの決意
この修業時代の経験を振り返るたびに、初心を思い出し、気持ちを新たにしています。お客様に心からの笑顔でお迎えし、真心を込めたサービスをご提供することの大切さを、改めて深く感じております。
どんなに小さなことでも、継続的な努力は必ず実を結びます。お客様の笑顔が私たちの最大の喜びであり、その笑顔のために、これからも成長し続けることをお約束いたします。
参考:The Inn at Little Washington - ミシュランガイド
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