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夏の幸せを運ぶデザート 2025.07.25




夏の幸せを運ぶデザート


~プリンとかき氷の物語~


7月25日、夏の特別な日


暑さが本格的になる7月25日は、プリン・パスタ・かき氷の日として親しまれています。食欲が減退しがちな季節でも、コースの最後に登場するデザートには、なぜか心が躍ります。今日は、夏の暑さを忘れさせてくれる魅惑のデザートたちの歴史と魅力をお届けします。



□黄金色に輝く幸せ「プリン」□


毎月25日はプリンの日。艶やかな黄金色に輝き、ぷるぷるつるつるとした愛らしい姿は、見る人の心を和ませます。やわらかく食べやすいその特性は、小さなお子様からご年配の方まで、世代を超えて愛される理由の一つでしょう。



船旅から生まれた知恵の結晶


プリンの故郷は、意外にもイギリスです。長い船旅の中で、限られた食材を無駄にしないよう、生地の中に詰めて蒸したものを「プディング」と呼んでいました。これこそが、人間の知恵から生まれた傑作の始まりでした。


海を渡ったプディングは、ヨーロッパ各地でさまざまな形に変化を遂げます。そして18~19世紀のフランスで、私たちが知る「カスタードプディング」が誕生したのです。フランス語では「クレーム・ランヴェルセ(Crème renversée)」と呼ばれ、「ランヴェルセ」は「ひっくり返した」という意味。完成したプリンを逆さにしてお皿に盛り付ける、あの特徴的な作り方から名付けられたのです。


一口頬張れば、なめらかな舌触りと甘い幸福感が口の中に広がります。それは何世紀もの時を経て受け継がれてきた、人々の「美味しいものを食べたい」という純粋な願いの結晶なのです。



□1000年の歴史を持つ「かき氷」□


ひんやりとした冷たさが、長い間人々の心を癒してきたかき氷。その歴史は、私たちが想像するよりもはるかに古いものです。



平安貴族の贅沢な夏の楽しみ


日本では平安時代から、かき氷が愛されてきました。「春はあけぼの」で始まる清少納言の『枕草子』にも、かき氷の記述が登場しています。電気も冷蔵庫もない時代、氷は非常に高価で貴重なもの。貴族だけが味わえる究極の贅沢品でした。


暑い夏の日、宮中で味わう冷たいかき氷は、現代の私たちには想像もつかないほどの特別感があったことでしょう。それは単なるデザートではなく、季節を楽しむ文化そのものだったのです。



世界を旅するかき氷


かき氷の魅力は国境を越えて愛され続けています。マレーシアの「アイスカチャン」、韓国の「パピンス」、タイの「ナームケンサイ」など、各国でそれぞれの特色を持った氷菓が発展しました。


特に台湾のかき氷は、マンゴーをはじめとした豊富なトッピングで世界的に有名になりました。氷の削り方によって食感が変わり、それぞれに異なる呼び名があるのも興味深いところです。



ヨーロッパが誇る氷菓の芸術「グラニテとグラニータ」


フランス料理において「グラニテ(Granité)」、イタリアでは「グラニータ(Granita)」と呼ばれる氷菓があります。これらは単なるデザートを超えた、料理の芸術品とも言える存在です。



コース料理に彩りを添える口直し


グラニテは本来、フランス料理のコースで肉料理とローストの間、または現代では魚料理と肉料理の間に供される口直しです。「ざらざらした」という意味のフランス語通り、ソルベよりも氷の粒が粗く、シャリシャリとした独特の食感が特徴的。口直し用のものは糖度を抑え、さっぱりとした味わいに仕上げられています。



シチリアから始まった氷菓の歴史


グラニータの起源は、地中海の美しい島シチリアにあります。その歴史は古く、9~10世紀頃、シチリアがアラブに支配されていた時代まで遡ります。


アラブ人たちは「シャルバート」という冷たい飲み物を愛飲していました。これは後の「シャーベット」の語源となった言葉で、「心地よいもの」という意味を持つほど愛されていたのです。暑い気候の地域ならではの、冷たいものへの深い愛情が込められています。


果汁やバラで風味付けされたその飲み物のレシピがシチリアに持ち込まれ、独自の発展を遂げました。冷蔵技術のなかった時代、人々はエトナ山やネブロディ山脈に積もった雪を洞窟に保管し、夏になると取り出してシロップをかけて楽しんでいたのです。


山へ雪を取りに行き、それを削り、味付けをする。現代では考えられないほどの手間をかけて、人々は冷たい美味しさを追求していました。その努力によって得られる味わいは、まさにひとしおだったことでしょう。


ローマ地方では「グラッタケッカ(Grattachecca)」と呼ばれ、氷の塊を削って味を加える作り方は、日本のかき氷により近いものでした。シチリアでは昔から、レモン、マンダリンオレンジ、ジャスミン、コーヒー、アーモンド、ミント、イチゴ、クワの実などのフレーバーが人気を博し、地方によって好まれる氷の粒の大きさにも違いがありました。




現代の幸せ


今の私たちは、高貴な身分でなくても、山に登らなくても、これらの素晴らしいデザートを気軽に楽しむことができます。


それは当たり前のようでいて、実は何世紀もの人々の創意工夫と情熱の積み重ねによって実現した、現代の奇跡なのです。



暑い夏に届ける幸せ


食欲が落ちがちな暑い季節だからこそ、これらの冷たくて美味しいデザートたちが持つ力は特別です。黄金色に輝くプリンのなめらかさ、かき氷のひんやりとした爽やかさ、グラニテの上品な口当たり。


それぞれが長い歴史と文化を背負いながら、今日も私たちの暑い夏に小さな幸せを運んでくれています。一口味わうたびに、遠い昔から続く人々の「美味しいものを食べたい」「涼しさを求めたい」という想いを感じられるのではないでしょうか。


この夏、デザートを楽しむときは、その向こうに広がる豊かな物語にも思いを馳せてみてください。きっと、いつものデザートが特別な味わいに変わることでしょう。






暑い夏の日々に、ひんやりとした幸せをお届けします。皆様が健やかで楽しい夏をお過ごしになりますように。



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